のんさん、細谷佳正さんの映画「この世界の片隅に」のネタバレ(あらすじ)をまとめた3つ目です。
前回までの「この世界の片隅に」
「この世界の片隅に」ネタバレ3
ひー坊の正体
義姉の径子は、父親へ時計をプレゼントしようと時計屋を訪ねた時、夫となるその店の若旦那と出会った。
そうしてお付き合いが始まり、結婚へ。
子供は二人。
久夫と晴美。
この長男の久夫が、周作の言う「ひー坊」で、晴美の言う「お兄さん」だったのだ。
径子と若旦那が結婚後店を新しくして、夫婦で頑張っていたのだが、体の弱い若旦那は早くに亡くなってしまった。
物をハッキリと言う径子は、向こうの両親とは折り合いが良くなかった。
それでも夫と共に新しくした店があるからと、あの土地で踏ん張っていたのだ。
しかし建物疎開の対象となり、径子には何も無くなってしまった。
そして下関へ行く事になったのだが、店もないのに折り合いの悪いあちらの両親と一緒に下関へなんて行きたくない径子は離縁して呉へ戻ることにした。
しかし、径子と晴美が実家に戻る事になっても、長男の久夫だけは黒村の跡取りだと言う事で、あちらが手放してくれないのだ。
気丈に振る舞ってはいるものの、径子はその事で随分参っているようだった。
「みんなが笑うて暮らせりゃええのにね」
径子の話を聞かせてくれた義母が、その話の後に呟いた。
辛い事の多い毎日、それでも笑って暮らせる日を迎える為、皆耐えているのかもしれない。
間諜の疑い
周作や義母から聞いた径子の息子久夫の話。
軍艦が好きだと聞いたので、せめて下関の久夫に軍艦の絵でも送ろうと、すずは畑にやってきた。
高台にある畑から海を眺め、晴美に教わった大和や武蔵を描いていた。
すると、そこに憲兵が現れ、機密事項が…と彼女を自宅へと連行したのだ。
そうしてまだ陽の高いうちから、夕方まですずが間諜なのではないか?と、径子と義母も交え、延々と話を聞かされた。
そうしてすずが広島に里帰りした際に、父に貰ったお小遣いで買ったスケッチブックは没収されてしまったのだ。
ご近所さんに教わった節約料理レシピや、楠公飯のレシピ、それから広島の景色のスケッチなど、沢山のものが詰まっていたのに。
その後皆が憲兵のショックに動けずにいる所に、周作が帰宅。
母や姉からすずが間諜の疑いをかけられた事を聞かされた。
スケッチブックも没収されてしまって、不便だろうと思ったのか、周作はすずを呼び小さなノートと鉛筆をくれたのだ。
すると母と姉はすずの話をして、「憲兵さんに申し訳なくてねぇ」と笑い出す。
何をどうしたって、このぼんやりな子が間諜な訳がないと思うと、おかしくておかしくて。
笑いを堪えるのが大変だったと言う二人。
それには周作も、「わしの事も録事の仕事を6時に帰宅するから、ロクジなんだと思ってる人だから」と、また笑い出す。
そうして晴美も含め、皆が大爆笑になった時、すずは先日の義母のつぶやきを思い出した。
「みんなが笑うて暮らせりゃええのにね」と言うつぶやきだ。
散々どやされて、どっと疲れてはしまったが、みんながその事で楽しそうに声を上げて笑ってくれた。
こんな辛い事ばかりの毎日の中で、こうして声を上げて家族で笑いあえる今は、幸せなのかも知れないと思えたのだ。
リンとの出会い
配給に砂糖がなく貴重品となった頃、すずの家ではその貴重な砂糖が蟻に狙われていた。
晴美とすずとでそれを見つけ、「ありこに狙われない所」と二人で頭を捻った結果、水に浮かべる事にした。
器を浮かべ、それに砂糖の壺を乗せて、完璧だ!と思った時、砂糖は無残に水に沈んでしまったのだ。
義母がへそくりを出してくれ、闇で買える市場を教えてくれたので、砂糖を手に入れるためにそこへ向かったすず。
しかし市場での砂糖の価格は配給の50倍の20円。
義母のへそくりと家族みんなの生活費を足しても25円。
なのに砂糖に20円も払っていいものか?
しばし悩んだ挙句、買って帰る事にした。
けれど砂糖の値段に驚いたすずは、そのうち砂糖は150円くらいになるんじゃ?…と言う所から、色々なものの価格が今後どうなるのかを考えてしまった。
「そんな国で生きていけるのやろか」と不安に。
そうしてやっと顔を上げたすずは、目の前に広がる見た事もない景色に「ここはどこやの?」と悲鳴をあげる事に。
道行く人に道を聞いても、誰も長ノ木が分からない。
困ってしまったすずは、道端に座り込み、落書きをしながら途方に暮れていた。
そんな時声をかけてくれる人が現れた。
白木リンと言う女性だった。
すずはぼんやりしているので、全く気づかないが、実はリンとは面識があった。
リンの幼い頃の思い出に「うちは貧乏じゃったから、スイカは人の食べ残しをかじってたんたよ。でも一度だけ親切な人のお陰で、赤い所食べた事もあるよ。遠い昔の話やけどね」と言うものが。
それはあの草津の祖母の家で出会った、座敷わらしの話だった。
そうして長ノ木に帰りたいと言うすずに、リンはしっかりと道案内をしてくれたのだ。
そんなリンのお陰で、彼女は無事に自宅へ帰る事が出来たのだった。
夢なら醒めないで
周作から電話で、帳面を届けて欲しいと頼まれたすず。
職場へ向かおうとすると、径子に注意されてしまう。
「そんな格好で行って、恥をかくのは周作なんだから」と。
仕方なく着替えて、せっかくなので白粉もつけておめかししてみた。
そうして彼の仕事場に着くと、あまりに白いすずを案じる周作。
顔色が悪いと思ったらしい。
用事を済ませたからと、すずが帰ろうとすると、「これから街へ行こう」と言う周作。
先日の市場への買い物で街へ出たのが楽しかったと、彼に話たのを覚えていてくれたようだ。
だから夫婦でたまには街を歩き、映画でも見ようと思い、わざわざ呼び出したと言うのだ。
ニヤニヤしながら彼の隣を歩き出したすずだったが、街には水兵があふれていた。
どうやら大きな船が港に着いたようなのだ。
「今日は彼らに譲ろう」と言う周作の提案に同意し、家路につく二人。
けれどすずは周作の背後に隠れるように歩く。
そんな彼女の行動を訝しがる彼に「小学校の同級で、水兵になったのがおって」と、その人に会ったらどうしようと思っていると話す。
すると周作は「ふつうに挨拶したらええ」と。
それでもすずは言うのだ。
昔の知り合いに今の自分があったら夢から醒めてしまうようで怖いのだと。
苗字が変わり、住む所も変わり、大変な事も多いが、周作さんは親切にしてくれるし、友達もできた。
だからこれで夢が醒めたら面白うない。
そんなすずの言葉に、選ばなかった選択は、醒めてしまった夢なんじゃろうな…と言う周作は、「すずさんを選んだんは、わしの人生の中で最良の選択じゃった」と続けた。
そう言いながら彼女を見つめ、少し痩せた気がして心配だと言う彼に、最近食が進まない…と返す彼女。
そうして二人で思い至ったのは、おめでただ。
翌朝、径子はすずに大盛りのご飯をだしてくれ「はい二人分」と言うのだ。
そのご飯を美味しく頂き、病院へ行ってみたのだが、夕飯は一人分に戻ってしまった。
おめでたではなかったのだ。
入湯上陸
海軍の水兵となった幼馴染の哲は入湯上陸で呉に上陸。
行くあてもなく同郷のすずを頼った…と言っていたが、望んで嫁いだ訳じゃないすずを、連れて帰ろうと思っていたようだった。
幼い頃から知っているからか、気安いやり取りの二人。
そんなすず達の様子に、周作は思う所があったのだろう。
湯上りの哲に「あんたをここで寝かせる訳にはいかん」と、納屋に泊まるように話をしたのだ。
その時すずは入浴中で、湯から上がると哲の姿がない。
驚いて尋ねると納屋で寝てもらう事にしたと言うのだ。
そうして周作は用意していたアンカをすずに渡し、哲のところへ持っていくよう指示。
そしてもう会えんかもしれんから…と、二人でゆっくり水入らずで話をして来たらええと言うのだ。
すずを母屋から送り出した周作は、玄関の鍵をかけてしまう。
きっとすずを哲に譲る覚悟を決めたのだろう。
そんな夫の覚悟に、すずも気が付いていた。
けれどアンカを届けに哲の元へ。
そうして同じ布団に足を入れ、積もる話をし始めた二人。
すると不意に哲が彼女を抱きしめて頬に唇を寄せた。
「すずは温いのぅ、柔いのぅ…」と。
そうして彼の唇が彼女のそれに触れようとした時、彼女は本当はこうなるのを待っていた気がすると。
けれどあの人に腹が立つ!と泣きながら怒る。
もう周作を愛しているのだ。
それに気づいた哲は、彼女と本当に積もる話をして、翌朝早くに帰っていった。
彼女が普通だ…と笑っていた哲だったが、帰り際に「お前だけはこんな世界でいつまでも普通でおってくれ、まともでおってくれ」と言い残した。
狂った世界なのだろう。
国のために死ぬ事が、名誉だと思わされた世界なのだ。
日々大勢の命が奪われている。
特に兵士として戦争に身を投じている哲は、世界の異常さを強く感じていたに違いない。