顎木あくみ『わたしの幸せな結婚』の感想

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出版社:富士見L文庫 
著者:顎木あくみ 
ページ数: 234ページ 
発売日:2019年1月15日 
価格:682円(税込)
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作品紹介

主人公は異能を持つ家の長女。
彼女の父と彼女の母は能力者同士の政略結婚。
なんでも能力者を絶やさないように…という考えからだとか。

そんな父には元々好いた女性がいたが、政略結婚のためにその人と別れ、そして生まれたのが主人公。
しかし彼女には異能の力がなかった。
それでも最初は愛してくれていた父も、彼女の母が亡くなると、元々好きだった女性と再婚。
それだけでも幼い彼女にはつらいことなのに、更に再婚相手の娘、彼女にとっては異母妹にあたる子に異能の力が発現してしまった。

そうしてシンデレラのように継母と異母妹にいじめられる日々。
いや、シンデレラのほうがよほど待遇が良かったに違いない。

お嬢様と傅かられる立場の彼女が、使用人のように扱われているだけでも可哀想なのに、彼女は家族とともに食事をすることが叶わず、更には使用人としても食事が用意されない。
だから使用人たちから余った食材をもらい、自分でなんとか食べられるものを作って食べるという食生活。
余り物が出ないときもあるので、毎日毎食食べられるというわけでもない。

そんな辛い状況の中、彼女は心を殺すことを覚え、なんとか生き抜く。
しかし、唯一の心の拠り所である幼馴染の幸次(彼の家も異能の家系で、彼もまた能力者)が、彼女の家に婿養子に入ることとなり、その相手に異母妹が選ばれてしまった。
幸次に想いを寄せていた彼女にとっては、それはとても辛い出来事。
なのに更に追い打ちをかけるように、彼女は異能の家系の中でも筆頭の久堂の家に嫁ぐことを言い渡されたのだ。
しかも久堂の当主は冷酷無比な酷い男で、婚約者候補は3日と保たずに追い出される…という噂があった。

そんなところに嫁ぐことになり、おそらく追い出されればもう二度と家に入れて貰えない。
そんな不安と恐怖で訪ねた久堂家は、彼女の想像とは少し違った、異能の筆頭の家系にしては質素な庵のような建物だった。
そうしてそこで待ち構えていたのは………。

感想

読み終えた高揚感のままに、順序とか気にせず、心のままに綴らせて頂きます。

知っている設定を特別なものに

すごく面白くて一気に読ませて頂きました。

最初、句点を多用される作者さんなので、そこに違和感はあったものの、内容が面白かったので次第に気にならなくなりました。

設定は割りと良く知っている感じのものかな?という印象。
結構こういう感じのラノベ作品を読んだことがあったので。
それでも異能という要素が、知っている設定を特別なものに変えてくれたように感じました。

異能に関して

異能に関しては、異能が国の役にたっていて、その貢献度で異能の能力者を排出している家の格が決まったり、生まれる能力者の能力が弱まってくると、その家の格が落ちる…みたいな設定は、とても興味深かったです。

更に異形に関しても、人の見えないものに恐怖する心がそれを生み出し力を与える…という内容も面白かったです。
すでに作中でも、科学が色々と証明しているので、人の異形に対する恐怖心も昔ほどでなくなったことから、今は異能の異能の能力者の仕事も少ないのだと。
異形が出てくるけど、それはそれとして特にその成り立ちに触れないものが多い中、それをしっかりと説明してくれているところが、とても良かったと思います。

使用人以下の暮らし

主人公は異能の家系に生まれ、両親共に能力者でありながら、なぜか能力を有すことなく生まれてしまった少女。
母の死後、継母と能力者として生まれて来た異母妹に虐げられ、彼女は使用人のような暮らしを強いられることになってしまったのです。

それだけでも十分すぎるくらい可哀想なのに、私が一番ビックリはしたのは、彼女の食事事情。
使用人のように扱われ、仕様人たちと同じ部屋を与えられた彼女は、けれど食事を与えられなかったのです。
家族とは当然一緒に食事をすることはなく、かといって使用人としての食事も用意されない。
だから彼女は料理人から余った食材をもらい、それを自分で調理して食べるしかなったのです。
しかもあまりは毎日出るわけじゃない。
出ないときは何も食べられないという暮らしだったのです。

使用人として生活と聞いたので、てっきり使用人と同レベルの暮らしは出来ているのだと思っていたのに。
実際は使用人以下の暮らししか出来ていなかったんですよね。

しかも服も血の繋がっている父が買ってくれることもなく、彼女は使用人の着古した私服をもらい、それを私服として着るしかなかったのです。

学校にしたって、通常お嬢様であれば女学校にも通うのに、彼女は尋常小学校を出た後はそれ以上の教育を受けさせてもらえなかったんです。

すべてここに繋がっていた

酷い扱いでした、酷い暮らしでした。
でもそんな時間があったから、清霞(久堂の当主)に初日に追い出されないで済んだようにも思えるし、何より他の令嬢とは全く違う…と興味を持ってもらえたんだと思います。

そこは私もすごく報われた気がしましたが、主人公もまた同じように、あの辛い時間がここに繋がっていたと思うと、全て報われる…と感じていたことが本当に嬉しかったです。

自分の人生でもそうですよね?
辛い時間って、きっと誰の人生にもあって。
けれどその後に『幸せ』と感じられるなにかに出会えた時、その辛かった時間が全て報われたような気がするんでよすね。
いや、気がするのではなく、実際に報われているんだと思います。
すべてここに繋がっていたんだな…と。
ここにたどり着くための試練だったのだな…と。

そういう表現にも、大変共感出来ました。

運命を感じた瞬間

旦那さまもとても素敵な人でした。
異能の家系では一番格の高い家の当主でありながら質素な生活をこのみ、噂が独り歩きしただけで、とても優しい人でした。

彼女を気にするようになってからは、彼女を守ろうと色々と手を尽くしてくれて。
そんな過保護な感じも良かったです。

そうそう、過保護と言えば、久堂家の使用人のゆり江さんが彼女が古い着物を繕って着ていることを清霞に報告すると、彼女を街に連れ出してくれて。
久堂家御用達の呉服屋で服を仕立ててくれたことが、本当に素敵で感動しました。
彼女に服を買うことを知られると恐縮してしまうから…と、自分の用事に付き合って欲しいと連れ出し、その日は櫛だけを彼女に贈り、後日着物を届けてくれた事がとても素敵でした。

しかも彼が一番似合うと思って選んでくれた反物が、彼女が母の形見として大切にしていた桜色の着物とよく似た反物だった事。
それは継母に奪われてしまって、今では彼女の手元になくなってしまったのに、それを知らない彼がそんな反物を選んだ瞬間、私は運命を感じてしまったのです。

そしてこの作品、主人公の美世は能力者の両親から生まれた無能の子…と描かれていました。
しかし要所要所に「もしかしたら能力者なのでは?」と思わせる伏線を感じました。
そしてそれは回収されずに終わったということは、これは続編への布石なのでは?とワクワクしております。

また彼女母方の実家の薄刃家は特殊な能力を有する家系という設定も面白いなと思いました。
思ったのにも関わらず、その設定があまり生きている感じがしなかったんですよね。
辰石のおじさんは自分の家の血に入れたいと狙って居たけれど…。
そこも次回作への布石かな?と思うのです。
そうであって欲しいのてす(笑)

薄刃家の能力は人の心に干渉してしまう能力。
故に薄刃の者は第一線を退き、ひっそりと暮らしていて、他所にその血を渡す事はなかったようなんですよね。
それが彼女の母が父に嫁ぎ、その能力を(恐らく本当は)受け継いでいる彼女か当代随一の能力者と結ばれるというところが、恋愛とは別な要素の面白さを感じました。

続編でこの薄刃家の能力について描かれたらいいな…なんて期待しています。
それともあれですか?
私が無知なだけですでに続編出ていたりするのでしょうか?
それなら嬉しいですが、もし出ていないのなら、続編を心待ちにしたいと思います。

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