のんさん、細谷佳正さんの映画「この世界の片隅に」のネタバレ(あらすじ)をまとめた5つ目です。
前回までの「この世界の片隅に」
「この世界の片隅に」ネタバレ5
広島へ帰ります
その年の7月は連日の空襲が酷いものだった。
毎日何度も鳴り響く空襲警報。
そして7月末の今日もまた、空襲警報が。
逃げようとしていたすずの目の前に、サギが飛んで来た。
広島の江波に居た頃、よく目にしていた鳥だ。
空襲警報の中、ここへ来ては危ないと思ったすず。
向こうへ行ってと思うと、サギはその方向へ飛んだ。
それでも心配で、下駄も履かずに駆け出した。
「あの山を超えたら広島じゃ」と叫びながら。
そうして空を見上げると、空には敵機が飛んできて、攻撃が始まった。
その様子に呆然としていると、周作が現れすずを抱き込み用水路へと飛び込んだ。
すずの手から離れたバッグは、敵の攻撃に蜂の巣にされてしまう。
危ない所だったのだ。
「死にたいのか?」と怒る周作に、「すみません。サギが飛びよりましたけぇ」とぼんやりした調子で返すすず。
そうして二人は水路で敵の攻撃を避けつつ、話をした。
「広島へ帰ります」と。
すずのその言葉に、「手の事を気にしてるのか?晴美の事か?空襲が怖いんか?」と問う周作。
どれもが正解だ。
けれどそうとは言えないすずは「違います」と答えた。
そんなすずに、すずさんが嫁いでからのこの一年半本当に楽しかったのだと言う。
そうしてあんたは違うんか?と。
今でもよその家なんか?と。
敵の攻撃の音が大きかった。
けれど周作の言葉はちゃんと耳に届いていた。
それでもここに居るのが辛いのだろう。
「聞こえん、聞こえん。いっこも聞こえん」と涙を流す。
そうしてすずは広島へ帰る事を北條家の皆に告げた。
原爆投下
8月6日の事だった。
その日は江波でお祭りが行われる。
広島へ帰る事を決めたすずは、その日広島へ帰ることになっていた。
病院へは予約を入れてあるので、病院へ行き手の治療を受け、広島の病院の紹介状を貰う。
そうして切符を買って汽車に乗り、広島へと言う計画だ。
荷物の準備をしていると、径子に病院の時間を尋ねられ、着替えも手伝ってくれた。
すずの脱いだ服も洗濯しようとしてくれたのだが、広島へ帰ってしまうので、それは洗濯じゃなく持っていきます…と受け取った。
更にはすずの妹すみの持ってきてくれた純綿でモンペもこしらえてくれて、ウエスト部分にはゴムを通してくれたのだ。
片手のすずが一人で着られるようにと。
そうして径子はすずに詫びた。
晴美の事をあんたのせいにして、悪かった…と。
径子は言う。
愛する人に早くに先立たれ、子供にも会えんくなった。
けど全部自分で決めた事じゃけぇ…と。
でもあんたは周りのいいなりになり、こげな所に嫁に来させられ、ええように働かされ、さぞ辛い人生だったろう…と。
そして自分で決めなさいと言うのだ。
これから広島で暮らすのも、ここで暮らすのも、自分の望むようにしんさい…と。
そんな話をしていると、一瞬何が強い閃光が走った。
「今なんか光らんかった?」と外でも皆が驚いていた。
とても天気のいい日だった。
けれど雷なのかもしれない…と。
そうしてさっき脱いだ服をカバンから取り出したすずは、お義姉さん、これ洗ってもらえますか?と頼む。
「ここに居らせてください」と。
すずは決めたのだ。
ここが自分の居場所だと。
ここで強く生きていくと。
終戦
広島へ落とされたのは新型爆弾だった。
呉の大空襲の際には、広島が沢山助けてくれた。
だから呉の人々は、広島に落とされた新型爆弾がどんなものか知らないながらも、靴も下駄もダメで道を歩けない時の為にと、わらじを作って送ることにした。
自分も大変な最中、それでももっと大変な人が居たら助けたい、力になりたいと言う優しさと強さ。
だからすずも思ったのだ。
呉の人たちみたいになりたいと。
優しく強く、この世界を生き抜ける人に。
米軍が空から紙を撒けば、それを拾う事は禁じられているのだが、すずは積極的に拾い、揉んで落とし紙にすると言う。
憲兵さんにどやされる…と言う周作にも、どうせ燃やされてしまうのなら、揉んで落とし紙にした方がええ…と返すすず。
使えるものはなんでも使って、強く生き抜くのだと言うのだ。
晴美を右手を失ったばかりの彼女からは、想像も出来ない程、強く生きようとする。
その後すぐに戦争は終わった。
日本は降伏したのだ。
しかしそれを聞いても、誰も喜ばなかった。
失ったものがあまりに大きいから。
それでも勝つと、最後の一人になるまで戦うのだと信じていたから。
全てが終わり皆の心に訪れたのは、安堵ではなく空虚だったのかもしれない。
この世界の片隅で
米軍が上陸してきた。
子供たちは米軍の人たちにおねだりをしてお菓子を貰う。
時折人の列が出来ていて並ぶと、米軍の残飯雑炊が貰える事も。
日頃の食卓は相変わらずないものばかりで、味気ない食事が続いていた。
だからとても美味しかったのだ。
敵国の食べ物が、その味付けが。
そうして冬を迎える頃、すずは草津の祖母の家へ向かった。
そこにすみが居るからだ。
すみは原爆病を患い療養中だった。
そんなすみから、母があの日街へ買い物に出ていて、原爆で亡くなった事。
その後10月に父が倒れてあっけなく死んでしまった事を聞かされた。
すみ自身も原爆病で伏せっているので、治るんかね…と弱気だった。
そんな妹を励まし、すずは広島の街を見て回った。
すると街のいたるところで声をかけられる。
広島の街を歩く人々は、皆誰かを失くし、誰かを探していたのだ。
そこですずは周作に会った。
終戦後も海軍がなくなるまでは秩序を守るのが法務の務め…と、家を出てしばらく海軍で仕事をしてた周作だったが、海軍もなくなりお役御免で帰る途中だったのだ。
二人は広島の街を歩き、あの橋へとやってきた。
それはばけもんと出会い、攫われたあの橋だ。
ばけもんの背負う籠の中で、幼いあの日二人は出会った。
あの頃にはもう戻れないと言う周作。
そう、日本は今目まぐるしく変わっているのだ。
沢山のものを失い、けれど立ち上がろうと必死に前に進んでいる。
そうしてすずと会えた事に感謝する周作に、「この世界の片隅でうちを見つけてくれて、ありがとう」と言うすず。
あの日の出会いがあったから、今二人はここにいるのだ。
その後呉へ向かう汽車に乗る前に、海苔巻きを食べていると、すずが1つ落としてしまった。
するとそこに一人の戦災孤児が通りかかる。
そうしてその海苔巻きを拾い、すずの腕を見つめていた。
失った右手の方を。
その孤児の母親は、原爆から娘を守り、右手を失っていた。
ぼろぼろの体で、右手を失い、体にはガラスの破片が刺さったまま、それでも娘の手を引いて必死に歩いていた。
しかし母は力尽きてしまったのだ。
そんな母の死も理解出来ぬまま、幼い娘は母に寄り添う。
次第にハエが飛びうじがわき、母の肉体は崩れ去った。
そうして娘は一人になり、さまよい歩いていたのだ。
すずと目が合い、海苔巻きを返そうとする孤児。
けれど「食べてええよ」と優しくすずは声をかけた。
そうしてすずに寄り添い、美味しそうに海苔巻きを平らげたその子は、すずの頬についていたご飯粒までも手に取り食べたのだ。
そんな姿に夫婦で微笑むと、すずの失った右手が母を思わせるのだろう。
嬉しそうにその腕に絡みつく。
そんな孤児を二人は迷わず家に連れて帰ることに。
周作は新しい仕事を広島で見つけたらしい。
すみの話もしたので、いっそ広島に所帯を持つか?と提案してくれたのだが、すずが断ったのだ。
うちが呉から広島に通います…と。
呉はうちが選んだ場所じゃから…と。
出て行く事を考えた日もあった。
それでも辛く苦しい中、自分で選んで決めたのだ。
広島ではなく呉で生きると。
そうして呉へと帰る。
孤児の女の子を連れて。
みんななにかを失くしてる。
けれど新しく得るものもある。
北條家が最初に得たのが、この子なのだろう。
新しい家族をみんなが受け入れてくれた。
失くしたものはあまりに大きい。
だからそれを埋める事は容易ではないだろう。
それでも人は強いから、きっと前に進んでいく。
彼らの進むその先が、平和な世界でありますように。
感想
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