のんさん、細谷佳正さんの映画「この世界の片隅に」の感想をまとめました。
「この世界の片隅に」感想
人の強さが描かれた作品
戦争という圧倒的な力に対し、人は無力です。
それでも作中の人々は、必死に生きている。
圧倒的な力の前に、時に絶望に襲われながらも、しっかりと。
そんな人の強さをしっかりと描いてくれた作品でした。
一番それを感じたのが、晴美の命とすずの右手が失われたシーン。
そして原爆のシーンの2つです。
2つが…という言い方をしてしまうと、弊害があるかな?と思います。
この2つはそれぞれに強さを感じたというよりも、右手を失う不発弾のシーンと、その絶望があるからこそ、原爆のシーンでの強さをより実感させられることに。
すず個人の乗り越える強さはもちろんのこと、自分たちも空襲で大変な思いをしつつも、以前広島の人に助けてもらったからと、広島の人たちを助けようとする呉の人たちの行動とその思い。
そこに見えた人の強さと温かさがとても好きです。
晴美の事件は衝撃で、観るのをやめたくなったりもしました。
それでも最後まで観ることが出来て、良かったなと思えました。
すずが諦めなかったように、私も観ることを諦めなかったおかげで、人の強さと優しさ、温かさを感じることが出来たから。
悲壮さを感じさせないすずという女性
悲しい物語です。
前半、すずのほんわかした人柄のおかげで、ほんわかした物語かと思えたのに。
最終的にとても悲しい物語でした。
けれど強くて優しい、温かい物語でもありました。
途中訪れた悲壮な雰囲気に辛くなったこともありましたが、それでもその悲壮感すらも柔らかくしてくれるすずの人柄と存在感。
彼女が主人公であったからこそ、この物語が成り立ったのだろうと思いました。
そんなすずの存在感を素敵な表現してくれたのんさん。
声優さんが本業ではないにも関わらず、とても素晴らしかったと思います。
またのんさんが声優として活躍されるのなら、ぜひ拝見したいと思えるくらいに。
周作と哲、呉と広島
周作と哲との間で揺れるすずが描かれているシーン。
観ていた時には、そう感じませんでしたが、あらすじをまとめたことで、一つ感じたことがあります。
それは周作が呉を表し、哲が広島を現していたのではないか?と。
すずのもとを訪ねて来た哲に、一度はすずを譲ろうとした周作。
ヤキモチも手伝っての行動だったものの、結局すずは哲と結ばれることを心のどこかで望みながらも、いざその時が来た時には周作を愛していた。
だから哲を拒んだのです。
それは晴美の事件がキッカケとなり、広島に戻ることを決意したすずが、最終的には呉を選んだことと繋がっているのかな?と。
周作を選んだあの時、きっと本当にすずにとっては、広島ではなく呉が自分の生きる場所だと心の中では決まっていたんだと思うのです。
だから広島に帰るあの日、径子の「自分で決めなさい」の言葉に促され出した結論が、呉に残るというものだったのだと。
私たちの戦い
この感想を書いている今は2020年の夏。
時期としては終戦記念日に近く、状況はコロナ禍。
すずたちのように、圧倒的な力であるコロナと戦っている私たち。
先の見えない戦いの中、彼女たちを思いました。
戦う相手は違えども、先の見えない不安は同じなのかも知れないと。
まだまだ終わりが見えず、不安に負けそうななるときもあります。
それでも彼女たちがその強さと優しさと温かさで乗り越えたように、私たちも乗り越えられると信じています。
いつかコロナが過去になった時に、例えばこの作品のようにコロナとの戦いが映画になることもあるかも知れない。
そんな時に、私たちの戦いに遠い未来の誰かが勇気を得てくれるといいのに。
そんなこともまで考えてしまいました。
人は強くて優しい。
そして温かい。
その持ち前の力で、今まで様々な困難を乗り越えて今日に至っている。
戦争という力の中でも、希望を捨てず強く生き抜いてきた。
だから今回もきっと乗り越えられる。
そう信じる力をこの作品からもらったような気がします。
この作品のネタバレ(あらすじ)
この世界の片隅にのネタバレ(あらすじ)です。