作品紹介
大学生の小鳥遊公生は、ある日自分のアパートの前で、制服姿で倒れている女子高生と出会った。
彼女は自分の名前が「カレン」という事は覚えているものの、名字もどこから来たのかも覚えていなかった。
当然病院や警察に連絡する事を考えた彼。
しかし彼女がそれを嫌だととても怯えるのだ。
そうして彼は彼女を自分の部屋に泊める事に。
そうして始まった彼と彼女の二人暮らし。
楽しい毎日の中、二人は互いに互いを想う心に気づいた。
もし彼女がすべてを思い出し、この部屋を出て行ったとしても、想い合っているのならまた会えばいい。
初めは彼女が記憶を取り戻し去っていく事に、酷く怯えていた彼だったが、互いの気持ちに気づいた時、そう思えるようになったのに。
二人の穏やかな日々は、そう長くは続かなかなった。
終わりはある日突然訪れて………。
感想
感想を書く事があまりに苦手過ぎて、プレイ済みの乙女ゲームのあらすじを書き始めた私が、精一杯綴った拙い感想です。
若干のネタバレ要素を含む可能性がございますので、閲覧の際にはご注意ください。
構成の巧みさ
最初はマリカさんが嫌いでした。
最初に出会ったカレンちゃん、あの子と主人公の彼を応援したいと思ったから。
初めは本当にかわいい二人だったんです。
素敵なカップルで。
でも次第にカレンちゃんも、若干面倒かな?と思うような面も見えて。
そんな要素も、後々理由が分かる事で、すごく素敵な意味を持ってくる。
そんなストーリー展開が、本当に素晴らしい作品でした。
常に小説を読む時は、無意識に誰かに寄り添ってしまうんだと思います。
そして今回、私が寄り添いたかった女の子はカレンちゃんだったのです。
だからこそ、マリカさんに変な敵意を読んでいる私が抱いてしまったのです。
でもそれも一重に構成の巧みさ故だと思います。
ミスリードされたといいますか、勘違いさせられていて、それで作者さんの狙ったとおりに感じてしまったのかな?と。
作者さんの狙い通り?
先程冒頭で言った「マリカさんが嫌いでした」という発言ですが、結果、素敵な人でした。
後に「嫌いだなんて思ってごめんなさい」と、全力で謝りながら読みすすめる事となりました。
それくらい、色々と感情が忙しく揺り動かされる展開だったのです。
最初はズケズケと勝手に人の心に踏み込んで来る、遠慮のない人に見えたのです。
カレンちゃんと三人で会っていた時は、彼への気持ちも見え隠れしているものの、適度な距離感を上手に保つ素敵な女性に見えたのに。
とある事件が起きた後に、目覚ましい変化を遂げてしまったのです。
押しの強さが遺憾なく発揮され、そこに嫌な気持ちにさせられているのに。
それだけではない。
まるでカレンちゃんのように振る舞う様子に、イライラとさせられてしまったのです。
それもこれも、作者さんの狙い通りの感想なんだろうな…と思えてしまう嬉しい悔しさ(笑)
これを何より感想としてお伝えしたいと思いました。
嬉しいんです。
そんな風に騙されてイライラさせられて、後にごめんねって思わなきゃならない展開。
やっぱりどんなにイラッとした相手でも、「やっぱりいい人だったのね」と思いたいのです。
物語の登場人物とはいえ、縁あって出会った相手なので。
そう思わせてくれる展開が、本当に上手で。
イライラさせられた時間も、いい感じに長くて。
そこも良かったように思います。
誰の明日も確実な保証なんてない
多分登場時間も、他のキャラクターと比べたら少しでした。
その少しのうちの八割も、本人と言うよりは人づてに話を聞く感じのキャラクター。
それが教授という人でした。
にも関わらず、やっと本人が登場し、授業を終えた後の一言。
それが本当に心を揺さぶりました。
誰しも明日何が起こるか分からない。
明日どころじゃない。
1分後ですら、自分の人生なんて保証がないんですよね。
それは私もそうだし、今これを読んでくれているあなたも。
そして私の大切な人も、あなたの大切な人も。
だからこそ、「いつでも伝えられる」という感覚は捨てなければならないのだろうなと思いました。
誰の明日も確実な保証なんてない。
明日言えばいいか?と思う事でも、今伝えなきゃいけない。
伝えるべきだと。
大切なパートナーはあなたが愛してくれている事を知っているとしても、毎日伝えた方がいいのかも知れない。
今日も明日も、毎日愛してると。
いつまで伝えられるか分からない言葉だから。
そんな気持ちを教えてくれたのが教授の言葉でした。
そしてその言葉に重みをもたせたのが、教授の経験した家族の飛行機事故でした。
そして「飛行機事故」というキーワードが、物語の中でも大きなカギを握る所も、大変素敵でした。
終わり方なんか、もう本当に最高でしたし、カレンちゃんの存在に本当に泣かされました。